実践!管理会計
 

設備投資資金計画

●前回までにキャッシュフロー経営の三原則の原則1と原則2を学習してきました。キャッシュフロー経営の三原則を覚えていない方に、再掲しますので、復習してください。

原則1.適正利益を生み出す
原則2.運転資本を増加させない営業活動
原則3.営業キャッシュフローの範囲内での設備投資

●今回は、原則3.営業キャッシュフローの範囲内での設備投資についてお話しします。

設備投資とは、土地・建物や機械装置などにまず資金を投下して、その投資により、将来獲得利益が増加したり、または将来必要費用が減少したりすることで、結果的に投下資金を上回る資金を回収しようとするものです。

設備投資額<将来獲得利益の増加額(または将来必要費用の減少額)

加えて

設備投資額<営業キャッシュフロー

●これらの設備投資を、営業キャッシュフローの範囲内で行うことが、キャッシュフロー経営三原則のその3です。言い換えると、自己資本の範囲内で、設備投資をし、借入金に依存しないことです。

新規事業の立ち上げや新店舗の開店などの大型の設備投資は別としても、経常的な設備投資は営業キャッシュフローの範囲内で行うようにしたいものです。

●それでは新規事業の立ち上げや新店舗の開店などの大型の設備投資の際は、どうしたらいいのでしょうか。

その際には、投資額がまず確実に回収できること、それから投下資本が新たな価値を生み出すことが、設備投資判断の条件であり、これらの根拠のしっかりした設備投資計画を立案する必要があります。

●設備投資計画の立て方は、一般的に次の通りです。

1.設備投資額の予想
2.売上高の予想
3.ランニングコストの予想
4.耐用年数の見積り
5.増加運転資本の見積り
6.資金調達方法の検討

●順に解説すると

1.設備投資額の予想
設備投資額は年度ごとに必要資金を見積もる。例えば製造業が機械装置の増設のために第1年度に100万円、第5年度に改装で20万円、第10年度で設備廃棄するとして廃棄費用が10万円などすべての投資額を予測します。

  (投資額の時間価値を無視した場合)

2.売上高の予想
設備投資をしたことによる増加売上高を、できる限り合理的な方法にて予想します。上記の機械装置の例で言うと、機械装置の生産能力×予想稼働率などにより、予想できます。小売業の店舗増設などでは、増加床面積×坪当たりの平均売上高などが予想方法として適当です。

3.ランニングコストの予想
設備投資をしたことによる増加ランニングコストを予想します。変動費及び固定費に分類した上で、さらに固定費を人件費、設備費、その他の固定費に分類して予想します。

4.耐用年数の見積り
設備の耐用年数を見積ります。これは決して税法の法定耐用年数でなくてはならないというものではありません。軽自動車のスズキは、管理会計上においては、機械装置の耐用年数を法定耐用年数の約50%で計算しているそうです。

5.増加運転資本の見積り
前回まで学習した運転資本が、どのくらい必要になるのかを見積もります。売掛債権+在庫−買入債務が、キャッシュフロー経営三原則のその2を遵守することで、できるだけ少なくする方策を考えます。

 6.資金調達方法の検討 
1から5までで設備投資額、売上高、費用及び増加運転資本を設備投資第1年度から、最終年度まで予測しました。これらを集計して、必要調達資金額を求め、調達方法を検討します。銀行借入の方法によるのか、自己資金を投下するのか、それとも増資や社債など他の方法によるのか、検討します。

●次回は、設備投資計画の時間的価値を考慮に入れて、採算性を検討したいと思います。

 

 
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